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ゼロは絶対創らない!

最近、私が所属しているある会から起業してから現在までの事をとの講演依頼がありました。担当者の方との打ち合わせの最中、当時の事がまるで走馬灯のように浮かびました。当時の私達夫婦は、来る日も来る日も商品の販売に必死の明け暮れでした。夜になると「さぁ~明日はどこを廻ろうか?」と、二人で地図を見ながら色々考えたものでした。
 
 ある冬の日、京都で飛び込み営業をしました。その日に限って中々商品は売れず、行けども行けども販売には繋がりません。12月の日の暮れは早く、あたりはもう薄暗く私の心中はあせり気味「今日はもう駄目かな…」見知らぬ街の家々の玄関には灯りがつき始め、風も一段と冷たくチラチラと白い粉雪まで舞ってきました。
 
 「もうやめよう、今日はあきらめて帰ろう…」「ダメダメ、今あきらめてはいけない。絶対にゼロはつくらないって決めてたじゃないの!」と、気の弱い私とそれを叱咤激励する前向きの私との葛藤が始まるのです。「わかった! それじゃ最後にこの長屋の端まで一生懸命に廻ろう!きっと良い人に出会うはず!」と、気を取り直し「ごめん下さい。こんばんわ!」と元気いっぱいドアノックを始めましたが、やっぱりいけません。ケンもホロロに断られてばかり。そんな時には街灯の下でお化粧を直し、自分の顔をチェック「サァー、後ひと頑張り! 何と言っても私はついているのだから」と前向きな私がニッコリ。しかしその日に限り端から端まで一軒残さず訪問したものの見事に全部断られて全滅。「やっぱり今日はダメなのかな、こうなったら反対側の並びも全部行ってみよう!」と裏の路地に廻りドアノック。するとその家の奥様らしき人が「あら、あんた又来たの? さっき断ったやないの!」と言うではありませんか。
玄関先の部屋は逆光線で奥さんの顔はシルエットのみ。「あっ、ここは今さっき断られたばかりのお宅の勝手口」と気づいて、とっさに笑いながら「すみません。表で断られたので裏口からもう一度伺いました」と言ったところ、奥様が笑い出して「あんた、よう頑張るねぇ~、こんな時間に一体何を売っているの?」結局そのお宅では、奥様は勿論お嬢様二人の合計3人分もお買い求めいただけたのです。万歳・バンザーイ!! 忘れられない嬉しい嬉しい冬の夕暮れでした。
 
当時の私がいつも考えていたことは決してゼロをつくってはいけない!ゼロ実績をつくってしまうと、それが癖になりそうで恐ろしかったのですが、何よりも自分自身に対して自信が持てなくなる事が一番怖かったのです。だからこそ、どんなに遅くなっても成果を上げるまで!と、ひたすら頑張った日々でした。12月のその日、売り上げもさることながら自信というかけがえのない強い味方がひとまわり大きく育ったように感じました。
 
 今回の講演がきっかけで、当時ドアノックで出来たお客様に逢いたくなりました。中でも私と同じ年の大変お世話になった方にさっそくお電話、喜ばれたもののその声がなんとなく暗く沈んでいるので、お聞きしたところ今年一月にご主人がお亡くなりになられたとの事、何十年ぶりかで訪問しました。ご無沙汰していた空白の時間を飛び越え、思い出話に花が咲く内に明るい笑顔が戻ってきたのです。
そう!この笑顔、この明るい笑顔が見たいから、美しく輝いていて欲しいから、私は仕事をしているのです。それが私にとっての天職だから。
 
 この度の講演会は、そんな大切な心の財産を忘れかけていた私に、再度思い出させてくれた素晴らしいチャンスだったのです。世の中に偶然はない。すべて必然である本当にその通り!と確信しました。