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演技力とは、その俳優の人間力!

友人達に誘われて映画“クィーン”を見てきました。ダイアナ元妃のスキャンダラスな内容も含まれたサスペンス調の映画だと思っていたのですが、そうではなく一人の人間としてのエリザベス女王を深く描いた作品でした。1997年8月31日「英国のバラ」と呼ばれ国民に愛された元皇太子妃ダイアナがフランスで事故死。その衝撃的な事故から一週間、ダイアナ元妃を国葬にしなければならないという前代未聞の出来事に対しての、王室の混乱とエリザベス女王の苦悩と葛藤が実に見事に描かれている作品でした。
 
なかなか公式声明文を発表しないエリザベス女王に対して国民から非難の声が集中、次第に反感を募らせ、ついには王政その物に対しての批判にまでエスカレートしていくのです。
そんな中ダイアナの事故死を二人の幼い王子に知らせないため鹿狩りに連れ出した夫、エジンバラ公を女王は自ら運転して探しに行くのですが、途中夕暮れの山の中でたった一人で夕焼け空をじっと見ている後姿、一体何を考えていたのか…、短い人生を閉じた元妃のこと?それとも国民の自分に対する不信感のことなのか?涙こそ見えなかったけれどその後姿は全身で泣いているように見えました。ふと気配を感じて振り返った女王は、少し離れた場所から一頭の立派な角を持った大鹿が自分の方を見ていることに気づきました。
大鹿は見るからに孤高の王の風格がありました。鹿と女王は互いに動かずじーっと見つめ合っていましたが、遠くで猟犬の吼える声…我に返った彼女が「早く、早く、逃げるのよ!行きなさい!」と必死で鹿を追い払うのです。その姿はまるでその孤高の鹿に自分自身を重ねているようにも見えました。
 
 ブレア首相の強い進言によりバッキンガム宮殿に戻ってきたロイヤルファミリーを多くの国民が出迎えます。気品に満ちた笑顔で歩いてきた女王。小さなブーケを持った少女と目が合います。立ち止まり「その花は、私が(ダイアナに)供えてあげましょうか」と少女に声をかけると、「いいえ」と断られます。一瞬女王の表情が強張りました。
でも少女が「これは、あなたにです」と言って花束を差し出すと、女王の表情は一瞬パッと明るく輝きその小さな花束をまるで子供のように胸に抱きかかえたのです。この映画で、44歳の若きブレア首相とエリザベス女王との人間関係も重要な見どころのひとつでした。当初、王室に批判的だったブレアが王室を守るために何度か女王に強く進言をするのですが、エリザベスが女王陛下として、また一人の人間としての狭間で揺れ動く苦悩や葛藤を少しずつ理解していく様子が実によく描かれていました。
 
最後の方で彼が、女王を罵倒した側近に言ったこのセリフが大変印象的です。「彼女は、50年間も国民のために尽くしてきたのだ。そんな女王を、あなたはそこまで批判できるのか!」と。
 この作品はヘレン・ミレンという優れた演技力を持った素晴らしい女優が居てこその映画だと思いました。
ストーリーとは別に、とくに残ったのは、女王を演じたヘレン・ミレンの気品と威厳に満ちた演技力でした。彼女がこの作品でアカデミー主演女優賞に輝いたのも当然の結果だったと思います。大げさな演技は一切なく、全てが圧倒的な静の演技でしたが、それは、演じる人の人間力ではないかと思います。
 
その俳優の生き方や物の考え方、人生や人に対する深さがなければ演じられなかったであろうと。「人生は舞台、人は皆演技者」であるならば…私も素晴らしい自分の人生を演じるために、もっと本気で真剣に、“人間力”を磨かなければと思いました。まだまだ道は遠いぞ・・・。